【雑記】中小ネットショップ(ECサイト)でUXを取り入れる一つの考え方…ネットショップで腕時計に使うバネを買って失敗した話

中小ネットショップにとってのUX(漠然としているので普段使わない言葉ですが)を日々考えていますが、なかなか考え方に整理が付かず常に悶々としています。あえて中小ネットショップとしているのは、世の中への『自己紹介』がある程度済んでいる大規模サイトとは状況が異なるからです。

これからのECは尖ったところを狙え。マルイはその通りにやってました。 – More Access! More Fun!という記事を読んで、なるほどなあとマルイの戦略に感心した一方で、この部分にちょっと違和感。

上記記事から引用:
「8年くらい前からネットショップやってます。昔は月に×××万円くらい売れましたが、いまでは×××万円くらいに減少してしまいました。楽天には出店するつもりはありません。どうしたらいいでしょう」というのがあります。

回答は決まっていて、
「他のどこでも売ってる商品は勝ち目がありません。オリジナルであったり尖った商品でないときついです」というしかない。

確かにそうです。

でも最近、そのお店にしか無さそうな商品を買った結果失敗したという私自身のネットショッピング体験がありました。お店の売上にはなっていますが、ユーザーである私は全く満足できなかったのです。…という事も起こり得るということです。

結論から言うと、必要な商品を正しく購入させる(=エピソード的UXを高める)という観点でのユーザビリティ調査を取り入れることで、同じような事態が発生する確率を下げることができるはず、という話です。

 

ある日、何年も使っていた腕時計のバックル部分のバネが壊れてしまいました。壊れてしまったのはこんな部品。このバネの片方がダメになったためバックルがちゃんと固定されず、いつの間にか腕時計が外れてしまうような状態でした。

写真01_壊れたバックル
└壊れた部分。溝にバネがハマることでロックできるようになっている。

写真01_壊れたバネ
└凄く小さなバネ。

修理してもらったら割高になりそうなので、「ネットショップでバネを買って自分で直そう」と思ったのが検索行動の開始。会社の昼休みを使って、パソコンから探しました。

 

買い物の流れ

 

■とりあえずアマゾン

アマゾン内で『バネ』と検索。全長や外経などが分かれば探せるのか、と気付く。しかし、アマゾンはバネを探しやすそうに見えない。

アマゾンでバネを検索
Amazon.co.jp

 

■Googleでお店探し

専門店があるだろうと考え、『バネ 通販』とGoogle検索。3つほどサイトを開いて比較。『ばねこむ』は、昔ながらな感じ(文字が小さくて色が薄く、情報量が多い)が漂う。『モノタロウ』は名前を聞いたことがあるなあ。

モノタロウ
モノタロウ

ばねこむ
ばねこむ

RSコンポーネンツ
RSコンポーネンツ

 

■バネの採寸

壊れていない方のバネの外径と高さを、iPhoneのアプリで測る。高さは7mm、外径は1mmくらい。

写真03_採寸

 

■お店の選定

『モノタロウ』と『RSコンポーネンツ』は目当てのバネ(外径1mm)を売ってないように見える。

商品が無さそうなモノタロウ
└最低6mm
商品が無さそうなRSコンポーネンツ
└最低2.75mm

 

■商品検索

『ばねこむ』のサイトには詳細条件で検索出来るページがあり、外観各寸法確認図を確認しながら『外経』と『自由高さ』を入力。それぞれ『0.9〜1.1』『6.5〜7.5』と入力。すると、たった1商品だけ現れた。

ばねこむの検索フォームへのリンク
└検索フォームへのリンク。見落としそう。

ばねこむの検索フォーム
└検索フォーム

ただ、商品ページを見ても本当にこれが手元のバネと同じ機能を果たすのか良く分からない。

ばねこむ商品ページ
└実際の商品の写真が無い商品ページ

 

■決済

最低20本からで1,604円という価格に若干悩みつつも、他で探すのも面倒なので購入。

カード決済がなかったので送料無料の銀行振込を選択し、購入完了。なお、検索開始から決済完了まで30分前後でした。

ばねこむ決済ステップ

 

■届く

結果、バネの反発が弱すぎて機能せず。バネの線が細すぎるみたい…。

写真04_新しいバネ
└購入したバネ(上)と純正のバネ(下)

 

[UX]的に分解してみる

こんな感じで、商品自体は失敗だったものの、一応スムーズな買い物ができました。

おかいもの研究室的視点で分解していこうと思いますが、UX白書に『UXについて議論したり話たりする時には、対象とする期間を明確にすることが重要で…』とありますので、活用してみましょう。

UX白書
└UX白書 P12より

対象とする期間の印象がどうだったか、何を考えていたか、加えて店舗との『接点』という視点を加えて分解してみました。

期間 印象の良し悪し 思考 接点
予期的UX 不安 ネットでバネを探したら、選ぶのが大変そう。 思考のみ
一時的UX 不安 4サイトを比較。『ばねこむ』のサイトはちょっと見にくいが、比較したサイトには目的の商品が無さそう。 PC(検索エンジン)
一時的UX 少し安心 これなら良いかな?と思える商品は思いの外簡単に見つけられた。 PC(サイト)
エピソード的UX 安心 特に迷うこと無く決済が完了でき、振込先案内メールもすぐに届いた。 PC(メール)
エピソード的UX 残念 でも、実際にはその商品では目的が達成できなかった。原因は「えいや」で買ってしまった自分にあると考えるが、もう少し商品写真があれば…とも感じる。 商品

購入するまでは良かったのですが、商品が本来の目的を果たせなかったために最終的なUXが悪くなってしまいました。

一方で、商品が目的を達成できていればとても良いエピソード的UXとなり、またこのサイトを利用しても良いと感じたでしょう。

 

購入しても満足しているとは限らない

このように、目的を達成するための商品を正しく購入できなかったというのは、ネットショッピングにおいては致命的です。そういえば、ブログで紹介させていただいている事例でも『致命的』なミスが発見されたケースがありました。

このような致命的なミスがあっても、お客さんはあまり意見を伝えてこないかもしれません。SDカードが無くても買って済ませるかもしれませんし、ギフト用に自宅用商品を購入しても案外見栄えがして「まあいいか」と思ってしまうかもしれません(除夜の鐘にはクレームをつけるみたいですが)。

いくら商品の品質が良くてオリジナリティが高くても、購入する商品を間違えていたら元も子もありません。ユーザーテストを実施すれば、(完璧ではないにしろ)このような事態が起こらないように事前検証できます。

タスク内容 … この部分に使うバネをこのサイトで注文してください。
タスク実施後 … 正しいものを注文したか検証する。

これだけです。これを3〜5人くらい。

 

商品検索機能のユーザビリティは悪くない

ところで『ばねこむ』のサイトは商品を間違えてしまうようなインターフェースだったのでしょうか。

そんな事は無く、例えば、検索フォームに入力する値の参照図は丁寧です。

ばねこむ
└この図がなかったら路頭に迷っていたでしょう

また、検索結果で商品ごとの詳細スペックが確認できます。

ばねこむ
└1商品しか出てこなかったとはいえ、検索フォームに入力した値と照らし合わせて目的の商品であることを検証できた

ただ、恐らくバネは線自体の太さや許容荷重などがとても重要で、そこに利用者(私)が気付けなかったのも正しい商品を購入できなかった一つの要因でしょう。

対面で接客が出来ないネットショップならではの課題かもしれません。

 

まとめ

最初の引用文に戻ります。

上記記事から引用:
「8年くらい前からネットショップやってます。昔は月に×××万円くらい売れましたが、いまでは×××万円くらいに減少してしまいました。楽天には出店するつもりはありません。どうしたらいいでしょう」というのがあります。

回答は決まっていて、
「他のどこでも売ってる商品は勝ち目がありません。オリジナルであったり尖った商品でないときついです」というしかない。

質問者さんは既にオリジナルだったり尖った商品を取り扱っているというケースもあると思います。それでも同様の悩みを抱えているとしたら、別の課題が存在しているのではないかと考えることになります。

その課題の一つが上記の事例と同じようなもの(買ったけど目的が達成できなかった)であれば、少しずつユーザーの満足度が下がり『昔』から『今』にかけて徐々に必要とされなくなってしまったということが考えられます。

必要な商品を正しく購入させる(=エピソード的UXを高める)という観点でのユーザビリティ調査は、中小ネットショップ(ECサイト)でのUXの取り入れ方の一つではないでしょうか。

サイトの操作性や文字サイズといった基本的なユーザビリティ、そもそものスマホ対応ももちろん大切ですが、先ずは商品を間違えて買ってしまわないようになっているか検証するのが優先すべきかなと思います。